【連載4】チャック近藤の昔々

FC会報誌「C.K.Press」(1997年~)に掲載したものを、 月に1度連載します。(画像が不鮮明ですが何卒ご容赦下さい)

昔々第四回

学校嫌いのその訳は・・・

さて、高校二年生になった幸雄「やや」青年でありましたが、高校の経営不振により一年生が入らず、いきなり後輩のいない男子校になってしまうのでございました。そんな状況も手伝ってか、勉強への意欲は益々薄れてゆくのでございました。

そもそも音楽学校への進学を希望しておりましたが、ピアノが弾けず断念してしまい、何故か都立にも行けず、ボタンの掛け違いのような気持ちで、学費が安いという理由で入った学校に勉強への意欲は湧かなかったのでございます。高校進学に当たって自分の家が貧困であるという事に初めて気づいた幸雄「やや」青年でありました。

学校では相変わらず野球もやっておりましたが、かといって野球をしに学校へ行っているという意識もございませんでした。このチーム滅多に勝つこともございませんでした、ゆえに勝ったときの喜びもひとしおで、一勝すると十勝した様な気分になれたのでございました。

趣味の放課後

そして学校が終わればバンド。メンバーは少し減りこそすれ続けておりました。バンドには何よりやることの喜びがございました。徐々にオリジナルも増え始め、この頃に皆さんご存知の曲も生まれたのでございます。

初めはジョージこと小西君と幸雄「やや」青年が交互に詩を書いておりましたが、やがて詩はほとんど小西君が書くようにあいなりました。曲は、先ず詩を書いて後で曲を付けるという方法で創作されておりました。そして驚きなのが、“The Fool On The Hill”の様に演奏にリコーダーを取り入れるといったアイディアをビートルズと同時期に幸雄「やや」青年が持っていたという事実でございましょう。創作初期の段階ではメロディーが先でコードは後からつけているなんてぇ感じでございますが、勉強していくうちにコード進行にメロディーをのせるという風になりがちでございます。幸雄「やや」青年もまたしかり。しばぁらくこの様な状況が続いておりましたが、今年久方ぶりにメロディー先行で曲ができたそうでございます。

楽しい?サイクリング第二弾

一年の時に続いて二年の夏にもサイクリングに挑んだ幸雄「やや」青年とその仲間達。今度は果敢にも広島の地を目指して出発したのでございます。ちなみに日程の都合で帰りは電車でございました。

若さというのは時に恐ろしいことを成し遂げてしまうモノでございます。この仲間達はまず一日で渋谷から沼津まで百六十kmも走破するということをやってのけたのでございます。そして毎日百km以上走り続け、九日間で広島に到着したのでございます。その間には悲喜こもごも、様々なことがございました。

先ず、毎日数百km以上走っていたのでお尻が痛いのでございますが、それを忘れてサドルに座ってしまい、その度に飛び上がっておりました。しかし、四、五日もするとさすがに学習し、そーっとサドルに着地するようになったのでございます。

また、浜松あたりではトラックの運転手に「広島まで頑張れよ!」と励まされ、喜んだ反面、「何でそんな事知ってんだよ?」と皆で頭をひねっておりました。考えるにネタ元はさっき食事をした定食屋のおばちゃんだったりするのでございます。

そして京都ではユースホステルが尼寺であったため瀬戸内寂聴さんみたいな方がいらしたとか。もちろん食事は精進料理でございました。

また、京都には仲間の親戚がおりまして、この旅の間中全く女っ気なしだった幸雄「やや」青年には仲間の親戚の女の子の京都弁がヤケにゾクゾクときたのでございます。「さとみちゃん元気かな?」(Byチャックさん)。

実は、この話には後日談がございます。幸雄「やや」青年は高校二年の春休みに一人旅でまたこの地を訪れているのでございます。そしてそのさとみちゃんの家に恐縮しつつ泊めてもらい、しかも京都を案内してもらったとか。この事は若き日の良き思い出になっているようでございます。

目的地を前に・・・

さて、もっともっと様々な困難を乗り越え、もうすぐ広島という所でこの仲間達にこの旅最大の危機が訪れるのでございます。

その時、三番手を走っていた幸雄「やや」青年でしたが、その前を走っていた仲間がコンクリートで固めたバス停の足にまともにぶつかり、自転車のハンドルが曲がってしまったのでありました。しかも幸雄「やや」青年はその後ろに衝突し、空中を飛んで杭にお腹からぶつかって崖下に転落。ああ、一巻の終わりか?と思いきや幸雄「やや」青年は奇跡的に無傷でありました。なんと運の強いと思わずにはおれません。

また、その後の展開が奇跡を通り越してまるで漫画。この事故現場、周りを見渡しても国道の両側はほとんど何も見当たらず、田畑が広がるところ。ところが、なんと目の前にポツンと一軒自転車屋があったのでございます。しかも、一部始終見ていたオヤジのその店に曲がったハンドルの替えが一つだけあって、取り換えてハイおしまい。何やらこの自転車屋のオヤジのワナにかかってしまったようで、やや唖然としながらも、仲間達は最終目的地にたどり着いたのでございました。

そんなこんなで悲喜こもごもございましたが、今度は誰も弱音を吐かず、長旅を乗り切ることができ、仲間と共に楽しく辛いことをするのはとてもいいモノだと思ったそうでございます。

当時は見知らぬ旅人同士でも色々なコミュニケーションがあり、それぞれの青洲があり、各々の主張がございましたが、今は無くなってしまったそうでございます。

この様に様々な事にチャレンジしながらも、どれもちゃんと深く追及している姿は今と変わらず一貫しているのでございます。

さて、次回はいよいよ本格的な音楽活動に入ります。お楽しみに。

テキス